2010.03.15

カテゴリー【特集】File.00

知られざる美唄の魅力を樹木に見いだす 北海道立林業試験場 緑化樹センター ご案内は僕、緑化樹センターの脇田が務めます!

焼き鳥でもなく焼きそばでもなく“美唄と樹木”? 一見意外な組み合わせのようだが、北海道立林業試験場 緑化樹センターの脇田陽一さんのお話は聞けば聞くほど、「え?本当?まだ知られていない?もったいない!」という驚きの連続。知る人ぞ知る美唄の意外な魅力、それはみどりの中にありました。

身近なみどりの相談窓口も

森林・林業に関する試験研究を行う北海道立林業試験場は、美唄市の中でも南東側、三笠市寄りに位置する。北海道短期大学専修大学の近くに実験林が広がり、同試験場の中に平成11(1999)年から緑化樹センターが設置された。

一般市民には縁遠い研究施設かと思いきや、「身近なみどりに関心を持つ道民ニーズに応える」形で誕生したという。新品種を含む北海道の風土にあったみどりづくりや樹木に関する市民相談にも応じる、いわば“みどりのプロフェッショナル集団”、それが緑化樹センター(以下センター)なのである。

生産技術科長の脇田陽一さんは、「センターの存在が地元の方にもまだ浸透していないのは残念の一言。『きたのみどり』という広報誌や『グリーンメール』というリーフレットを発行していますし、見本園の案内やガーデニングの相談も無料で行っています。みなさんに、もっと気軽に活用していただきたいですね」とPRする。

北海道立林業試験場

「森とみどり」に関する相談はホームページからも受付中。

樹木の付加価値って何だろう

脇田さんが所属する生産技術科は絶滅危惧種も取り扱う。例えば、美唄市内の防風林内に自生するクロミサンザシもその一つ。樹木の生存競争に後れをとり、数が減少した。DNAを使った産地識別によると、道内には道央、道東、野付半島とおよそ3つのグループに分類されることが判明した。

「絶滅危惧種を守ることももちろん大事な役割ですが、より大きい視野で考えると付加価値の高い北海道のみどりを守り育てていきながらうまく利用していく、それが僕らの使命です」。

では、樹木の付加価値とは何だろう。真っ先に思いつくのは、観賞用に美しい・見栄えがする。絶滅危惧種のように数が少ない・珍しい、あるいは校庭の木のように個人の思い出がつまっている…「さらに木の実の栄養成分が高いとかその土地以北では育たない北限地であるなどの学術的な付加価値も加わってきます」。

なるほど、見方によって付加価値を持つみどりはたくさんある。「その中でも」と脇田さんの言葉は続いた。「とっておきのものが、実は美唄にもあるんです」

クロミサンザシ

写真左からクロミサンザシの実と花

「ありえない」海外研究者も驚き

付加価値だらけのとっておきのみどり。「それは世界中で最も寒いところに自生するサクラ、チシマザクラです」と脇田さん。

北海道の代表的な桜といえば、鮮やかなピンク色が印象的なエゾヤマザクラ。美唄の東明公園は道内屈指の花見スポットであり、ソメイヨシノの北限地として知られている。脇田さんが語るチシマザクラはその東明公園にも咲くエゾヤマザクラよりも淡いピンク色の花を咲かせる。

「そして東明公園にあるチシマザクラは、なんと驚くことに花弁の真ん中に真っ赤な線が入っているんです!」。それはまさに自然の神秘。さらに、サクラには珍しい甘やかな“香り”を持ち、鉢植えが可能。他にはない特色だらけのチシマザクラには、こんな笑い話もついてきた。

ある海外の研究者が台木になるような小さなサクラの品種を探していた。脇田さんはこのチシマザクラについて詳しく説明し開花の写真も見せたが、肝心の本人がどうしてもその存在を信じない。「盆栽以外で、鉢植えでこんなに旺盛に育つサクラが本当に存在するなら世界が放っておかないはずだ」と言い、花のついた写真を最後まで合成ではないかと首を傾げつつ帰っていったという。

「日本の植物図鑑には正式に載っているんですが、世界にはまだまだこの存在が知られていない。美唄が持っている、とても貴重な北海道のみどりの財産の一つです」。

現在、チシマザクラは苗木の安定供給のためにさらなる研究が続けられている。将来はどんな美しい風景が見られるのか、普及の日が待ち遠しい。

チシマザクラ

写真左は美唄公園のチシマザクラ。花弁の真ん中を走る赤いラインが肉眼でも確認できる。写真右は一般的なチシマザクラ。

もちろん合成でもなんでもなく本当に鉢植えで花を咲かせるチシマザクラ。写真右は09年に林業試験場で品種登録をした濃紅色のチシマザクラ「国後陽紅」(くなしりようこう)。

美唄に来ないと食べられない

次はみどり、というより木の実の話。脇田さんは、美唄の特産ハスカップを全国に発信する“美唄ベリー構想”にも強い関心を寄せている。

現在、美唄のハスカップは日本一の収穫量を誇るが、元々の原生地である苫小牧や栽培面積日本一の千歳もあり、美唄オンリーワンのアピールポイントを模索中だ。

「ハスカップの実はつぶれやすいため、あらかじめペーストや加工品にして流通している現状を踏まえて、『美唄に来れば生の実を食べられる』という売り出し方もあるはず。農家さんたちは収穫時期や株による味の違いも詳細に把握しています。修学旅行生にアピールするなど出来ることはまだたくさんある」。

アイヌ語であるハスカップの英名はハニーベリー。和名はクロミノウグイスカグラ(黒実鶯神楽)。ブルーベリー人気を追うベリー路線でいくか、黒実鶯神楽の雅な和のイメージか。「ピパ」(美唄の由来になったアイヌ語)とあわせた「ピパベリー」などのアイデアも飛び出し、ハスカップのまち・美唄に新たな活路を見出そうとしている。

ビンを使った樹木の組織培養

ビンを使った樹木の組織培養は寒冷地北海道ならではの知恵。

「町内みんなの子どもだから」

「僕は外から来た人間なので、地元の方が当たり前に思っている美唄の魅力を掘り起こすのが役目」。そう語る脇田さんは愛知県生まれ。大学で農作物の遺伝子研究を専攻し、10年前に石川県からセンターに転職してきた。「樹木の遺伝子研究も面白そうだなと思ったことと、生まれたばかりの子どもを北海道の自然の中で育てたくなった」のが転職動機。

初めての冬は自宅前の道路の氷を溶かそうとお湯をかけ、やかんを置いて戻って来たら氷が2倍の厚さになっていて出社できず、なんていう失敗談もあったが、美唄への愛着は年々増すばかりだという。

「とにかく美唄は“人”がいい。愛想がいいわけではないんですが(笑)、打ち解けてくるとみなさん、とことんあたたかい。町内でもうちの子のことを“みんなの子どもだから”と見守ってくださるご近所に囲まれてどれだけ助かっていることか。僕がちょっと迷った時でも“外から来た人にしか見えないことが絶対あるから”と背中を押してくださった諸先輩がいて、この土地での存在理由を見出していただきました」。

大学もあり研究機関もあり、みどりを知る生産者もいる。「みんなが集まれば必ず大きな力を発揮できる。緑化樹センターも僕もその一端を担って、美唄に眠るみどりの財産をアピールするお役に立てれば嬉しいです」。

緑化樹センターの脇田さん

「地元のお年寄りはみどりの知恵袋。僕のほうが教わってばかり」と脇田さん。


北海道立林業試験場 緑化樹センター

http://www.hfri.pref.hokkaido.jp/01ryokka/ryokka.htm
〒079-0198 美唄市光珠内町東山(北海道立林業試験場庁舎内)
TEL:0126-63-4164 FAX:0126-63-4166