2011.02.01

カテゴリー【特集】

地域おこし協力隊員も挑戦! 初めての農家民泊

「農村には夜がある」「茶色い土が美しいと初めて思った」「今までおいしいと感じていたのは調味料の味だった」、そんな数々の感動で都市から訪れる方々の心をわしづかみにする美唄農家民泊。札幌からここ美唄に移り住み、じき半年になる私こと‘地域おこし協力隊員’も、実は農家民泊はこれが初めての経験です。一体何が待ちかまえているのか、期待に胸を膨らませて行ってきます!

宿泊先は水稲農家の藤井さんです

9月吉日。パジャマ、歯ブラシ、タオルを持参し、親戚の家に泊まりに行く感じで準備は万端。宿泊先は美唄で水稲農家を営む藤井さんのお宅です。この日の待ち合わせは午後6時にアルテピアッツァ美唄の駐車場。笑顔で登場した藤井さんの車に乗り込み、いよいよ農家民泊の始まりです。

美唄の農家民泊は、関西や道内からの修学旅行生を対象にしたものが盛んに行われる一方で、農村や自然体験に関心を持つ大人対象の民泊も評判を呼んでいます。「子どもたちには丁寧に噛み砕いて説明するところも、大人同士だと話が理解してもらいやすいから助かるね」と藤井さんが解説してくれました。

藤井さんのお宅へまっすぐ向かうのかと思いきや、「ちょっと遠回りして行こうね」。車は炭鉱で栄えた街並みが今も偲ばれる東明地区の高台へ。「うわあ、きれい!」思わず声が上がるほどの素晴らしい見晴らしです。藤井さんはきっとこの見事なピンク色の夕焼け空を見せるために遠回りをしてくれたのでしょう。「この辺は炭鉱時代からの平屋が残ってるんだよ」飾らない言葉と穏やかな口調で話す自然体の藤井さんに、こちらの緊張も少しずつ解けてゆきます。

「稲刈りが今日から始まったんだよ」。藤井さん宅に到着すると、田んぼにはハーブ米(減農薬ななつぼし)の稲穂がびっしり。9月でもまだTシャツ姿の私とは対照的に稲穂は季節をしっかり受けとめ着実に成長しています。

「ようこそ!いらっしゃい!」奥様のえつこさんは気さくで温かい感じの方。到着が遅めの時間だったためすぐにお風呂、そして晩ごはんへ。お楽しみの献立は紫蘇の実の天麩羅、茄子の味噌チーズ焼き、ビーフシチュー、いかのミョウガ和え…えつこさんの気持ちがたくさん並びました。お米がなんておいしいんでしょう!

居心地のよいお部屋   晩ごはん、豪華すぎですよ!

居心地のよいお部屋   晩ごはん、豪華すぎですよ!

夕食後はえつこさんを交えてのおしゃべりタイムです。えつこさんの思う農村の一番の魅力とは「自分で作ったものを自分で食べられること」。外食はなんとなく罪悪感を感じてしまう、なんてお話も。採れたて野菜をめいっぱい使ってくれた夕食のあとです、説得力があります。
 農村生活はご近所とのつながりが深く、深いがゆえの喜びや悩みも混在するのだとか。農家さんの現状を直に聞けることが楽しくて、えつこさんも聞き手の反応が新鮮な発見につながると言ってくれました。まるで相思相愛の間柄じゃないですか!

農家民泊三度目の相棒を紹介します

私の民泊体験には頼もしい相棒がいてくれました。美唄農家民泊はこれで3度目というスペシャリスト!東京からいらした池谷さんです。
 「冬の美唄で見た一面の雪景色が忘れられなくて」という一言から始まり、素材のおいしさを知ったこと、美唄の農家さんが博識で驚いたことなども気さくに話してくれた池谷さん。日本の農家の現状がわかり、とても勉強になったそうです。
 さらに嬉しいことには、民泊仲間同士の会話でも「美唄の農家さんはピン(最高の)農家さん!」と高い評価が飛び交っているとのこと。民泊先での出会いを通じ、自分の生活や働く意味を見つめ直せたことも大きな収穫だったと語ってくれました。
 一対一で深く濃く人と関わり合いたい。全く違う世界観に触れたい--。都会に住む人ほど農家民泊の何もかもが新鮮に響くのだと、池谷さんのお話を聞いて強く確信できました。

歌やギター演奏、もちつきで盛り上がった冬の農家民泊(2009年・2月撮影)

歌やギター演奏、もちつきで盛り上がった冬の農家民泊(2009年・2月撮影)

夜も更けて藤井さんご夫婦に「おやすみなさい」の挨拶をし、池谷さんと私がお部屋に戻ってからじっくり話し合ったお題は、「恋」。女性共通の話題でもあります。利害関係もなく知らない者同士だからこそ言えること、素直に聞けることがあるのでしょう。ご縁の不思議さも感じます。真夜中までおしゃべりは続きました…。

写真左)お部屋の電気のヒモの先に民芸品。写真右)見上げると、藤井さん自らが前日に急いで張り替えて下さったという新品の天井紙が。

写真左)お部屋の電気のヒモの先に民芸品。「かわいい!」池谷さんもお気に入りです。
写真右)見上げると、藤井さん自らが前日に急いで張り替えて下さったという新品の天井紙が。ありがとうございます。しわの一本一本がなんだか愛しくなるのです。

ごはんがおいしい!早朝ドライブ

翌朝6時、藤井さんが私たち二人を車で10分程の三笠にある達布(たっぷ)山へ案内してくれました。360度の大パノラマが広がり、実った稲であたり一面が黄色の世界。今この時期だけの実りの色だと思うと感動です。「雨や日照りにいじめられなければ稲は素直な黄色になる。いじめられて育つとどす黒い黄色になる。人間と同じさ」と藤井さん。なるほど、今年だけの色でもありましたか!
 途中、池谷さんが道ばたの植物を見て「うわあ、ガマだ!」と大喜び。生まれて初めて本物を見たそうです。採ってあげると「東京まで持って帰る!」と丁寧に包んでいました。

稲穂の黄色に染まる秋の美唄  オールド・ノリタケのお皿

稲穂の黄色に染まる秋の美唄  オールド・ノリタケのお皿

朝の清々しい空気と見事な景色で心身ともに完全に目覚めたところで、お待ちかねの朝食です。藤井さんの息子さんご家族も合流し、賑やかな朝食となりました。
 前夜のことです。池谷さんも私もアンティークやレトロなものが大好き!という共通点を見つけました。今朝方のドライブで見かけた小さな神社にもキュンときて同時に顔を見合わせたほど。なので、昨夜えつこさんが何の気なしに出してくれたお皿にも私たちは大はしゃぎ。「オールド・ノリタケだ!」日本陶器を代表する名器の登場に喜んでいると、えつこさんは「有名なの?ただの古いお皿だと思ってた」。笑いながらも、今朝の食卓にもしっかりと使ってくれる心遣いが嬉しいのです。

朝食後はアルテピアッツァ美唄まで車で送ってもらい、農家民泊はこれで終了。池谷さんとはその後一緒にアルテ主催の「こころを彫る」授業に参加して大理石を彫り、えつこさんの握ってくれたお赤飯のおむすびを一緒に頬張り、日が暮れるころには再会を誓ってそれぞれの帰路に着きました。さみしい気持ちになるはずの私を、なぜでしょう、なんとも言えない“温かな満足感”が包んでいます。

日常の垣根を越える「農家民泊」

秋の稲刈りという超繁忙期に数々の心づくしで迎えてもらう…今回初めて農家民泊を経験した私は、驚きや感動の思い出を振り返る一方で、農家さんの負担について考えてしまいました。もちろん代金はお支払いしていますが、送り迎えや食事の準備、話相手やガイド役など、もしかして対価以上のことをしてもらっているのでは?
 優しくされればされるほど、こちらもなにかしなければ、感謝の気持ちをどうにかして伝えなければ、という衝動にかられます。でも結局行動に移せたことといえば、せいいっぱいの笑顔を見せること、「また来ますから!」くらいしか言えませんでした…。

こんなことを考えてしまうのは、すでに私自身が訪問客である立場を超え、迎えてくれた藤井さんたちを「他人」という垣根を越えて見ているからなのです。
 そう、「垣根を越えること」。私がもらった温かい満足感の正体がわかりました。美唄の大地と農家さんを通せば、日常に横たわるいろいろな垣根をたやすく越えられる。これこそが農家民泊の魅力なのです。その感動にいち早く気づいた池谷さんのような方々が再び美唄の地に帰ってきてくれることでしょう。そしてこれからも毎年新たな仲間が増えていくと信じています。

藤井さん、池谷さん、ご協力ありがとうございました。いつかきっと“再会農家民泊”をしましょうね!

地域おこし協力隊員 増子和美


美唄市での農家民泊についてのお問い合わせは

【問い合わせ】美唄グリーンツーリズム研究会事務局 美唄市農政課 TEL.0126-62-3178  

もっと知りたい方は【農村へおいでよ!】ページをご覧下さい。