モダンな白壁の店がまえに
期待も高まる美唄地鶏
モダンな店舗デザインをはじめトータルプロデュースは札幌の設計会社「E2O(イー・ツー・オー)」が担当した
国道12号線を札幌から旭川方面へ向かい、美唄農協ライス工房が左側に建つ十字路を右折してひた走ると数分後、白壁のモダンな店がまえが見えてくる。店の名前は「美唄地鶏とお蕎麦のこはれ」。2007年(平成19年)の開店以来、自社の鶏舎で育てあげた地鶏料理が評判を呼び、全道各地から客が押し寄せる美唄の新グルメスポットだ。
明治時代の入植以降、美唄市の歩みはつねに鶏の食文化とともにあった。市内北西部の中村地区では遠方からの客をもてなすために当時農家の貴重な収入源だった鶏をあますところなく使いきる「中村のとりめし」が生まれ、いまもふるさとの味として受け継がれている。美唄が炭鉱産業で栄えた昭和初期にも、「美唄焼き鳥」の愛称でおなじみのモツ串は威勢のいいヤマの男たちの胃袋におさまっていった。
そして平成のいま、美唄に待望の地鶏が誕生。いったい誰が、どういう思いで始めたのだろうか。
在来種の血統50%以上、平飼いなど
JAS規格をオールクリア
直営鶏舎で約180日間、健やかな環境で育てられる美唄地鶏
秋田県の比内地鶏や会津地鶏、薩摩鶏、コーチン、烏骨鶏と日本各地に広がる地鶏の銘柄。この「地鶏」を名乗るには農林水産省が取り決めた以下の4つの条件を満たしていなければならない。
第一の血統については明治時代までに国内で成立、導入された「在来種」の血統が50%以上のものであること。第二の飼育期間はふ化日から80日以上、さらに生後28日以降は鶏舎や屋外の地面を鶏が自由に運動できる「平飼い」で育てられ、1平方メートルあたり10羽以下という伸び伸びとした飼育密度まで定められている。
こうした条件をすべて満たしたうえではじめて名乗ることができる「地鶏」の銘柄。設備投資や時間がかかるこの一大事業に、意外にも美唄市内の建設会社が乗り出した。
日本三大地鶏の系譜に
和の名料理人も動き出す
こはれ店長兼料理長の吉田純一さん(58歳)。
創業30年の歴史を誇る北有建設株式会社は、2001年(平成13年)に二代目の山口英男社長が跡を継いでから公共事業に頼らない新たな事業展開を模索していた。山口社長が名案を思いついたのはやはり身近な食文化から。「焼き鳥、とりめしの美唄に地鶏を」と、国や市の助成を受けて本格的な養鶏事業に着手した。
日本三大地鶏で知られる比内地鶏にフランス産の黄斑プリマスロックを掛け合わせた美唄地鶏は、「噛むほどに味とコクが際立つ旨み」が自慢。日本人好みの味わいを実現すべく米や麦、大豆を混ぜあわせた植物主体の飼料で丹精に育てられている。
一級の素材を活かすには腕のある料理人が欠かせない。「こはれ」の厨房は、かつて札幌の高級料亭「エルム山荘」の料理長も務めた和の職人・吉田純一さんがすべてを取り仕切ることになった。新店舗のメニュー開発に定評がある吉田さんにとっても美唄地鶏は「取り組みがいのある食材」、札幌の自宅とは別に美唄市内に住まいをかまえるほどの本気を呼び起こしたという。
地鶏の刺身、にぎり寿司
はじめて味わう地鶏食彩
「地鶏刺身盛り合わせ」1,350円
「地鶏にぎり寿司」730円
「こはれ」のメニューには、鮮度抜群の地鶏ならではの垂涎ものがずらりと並ぶ。鶏舎から毎朝届けられる地鶏の状態を吉田料理長自らが見極め、刺身や握り、揚げ物など最適な献立に使い分けている。
来店したら必ず食べておきたい「地鶏刺身盛り合わせ」は、ムネ・モモ・ササミ・砂肝の4種類。鮮やかな赤みが目をひく砂肝は「鮮度に自信がないと出せない逸品」と料理長も胸を張る。ムネ・モモ・ササミをネタにした「地鶏にぎり寿司」はゆず醤油のタレが上品な味わいをかもしだす。おいしさの秘密は寿司めしにも隠されている。「魚の寿司と同じ酸味では鶏肉とのバランスが整わない。鶏の旨味を引き立てるよう酢を控えめに、風味が増すシソとゴマを混ぜた当店でしか食べられない地鶏寿司です」。
温故知新の思いをこめて
美唄の食を晴れやかに
社長のアイデアから実現した「元祖塩そば」650円
「地鶏炭鉱焼き 男印」730円
平飼いで育った地鶏は骨格、肉づきともに堂々たるもの。この立派なガラを6~8時間炊き上げた風味豊かなスープでいただく「塩そば」には、どこにもないという自負をこめて「元祖」の冠をつけた。蕎麦粉には美唄産の北早稲(きたわせ)を、味つけには宗谷海峡の自然塩に水を加えて煮詰めた「水塩」を使う。「塩の角味をとり、まろやかさを出すための和食の古い技なんです」と吉田料理長が教えてくれた。
地鶏料理のなかで目を引いた「地鶏炭鉱焼き 男印」とは?「食べごたえのあるモモ肉の外側を熱い鉄板でパリッと焦がして、中はふんわり。苦みばしった味が男性的でしょう。これはね、昔、炭鉱で真っ黒になったヤマの男たちのイメージなんです」。
美唄地鶏という最高の食材に温故知新の思いをこめて、地元に活気をもたらす地鶏料理の「こはれ」。昼の限定御膳や鍋コースも充実、魅惑の鶏づくしで美唄の食を晴れやかに彩ってくれる




