2009.10.22

カテゴリー【特集】File.00

地元食材を使った学校給食で大きくな~れ!びばいっ子

「学校給食にも地産地消を」。近年、北海道各地で取り組みが活発になっているなか、美唄市では近年の動きに先駆けて約20年前から地元産の食材を積極的に学校給食に取り入れてきた。食べる子ども、見守る大人たちの視線から、美唄の学校給食を追った。

美唄のおいしさが詰まった給食で成長

美唄市立中央小学校1年生 美唄市立中央小学校1年生 美唄市立中央小学校1年生

美唄産食材を使ったチキンカレーの給食を食べる美唄市立中央小学校1年生のみんな。元気いっぱいモリモリ食べるのはおいしい食材のおかげだね!

「美唄市立中央小学校のお昼どき、教室からはひときわ元気な子どもたちの声が響く。1年生の教室をのぞくと、かわいらしい子どもたちが楽しそうに給食の準備に取り掛かっている。

今か今かと「いただきます」を待ちきれない子の姿もちらほら。今日の給食はみんなの大好きなチキンカレー。付け合わせにはこぶ茶で味付けしたキュウリとデザートにリンゴも添えられている。

一見どこにでもあるメニューだが、食材はこだわりの“美唄産”。近年、学校給食にも道産食材を取り入れる動きがあるが、美唄市ではすでに20年以上前から独自に美唄食材を積極的に使用してきた。この日のメニューでは、お米はもちろん、カレーに使われているジャガイモとタマネギも美唄産。日によってはさらに多くの“美唄産”が含まれる。

準備が整うと「いただきます!」、子どもたちはおいしそうに給食をほおばる。あっという間に平らげて、おかわりをする子も。

「今日の給食はどう?」という問いに、「カレー大好き!」「おいしい!」「給食大好き!」、子どもたちは口々に答える。「この野菜はみんなと同じ美唄育ちなんだよ」と教えると、「おじいちゃんちでもジャガイモつくってるよ!」「私のうちでも!」と次々に声が上がった。

実家や親類縁者に農家が多い美唄っ子たちにとって、地物野菜を食べることはそう珍しいことではないようだ。だがしかし、公の場である学校給食でも、となると仕入れやコスト、調理面などさまざまな問題をクリアしなくてはならない。

家族の食卓のように心を込めて

栄養教諭の池田朋美さんと佐藤明子さん

左から栄養教諭の池田明美さんと佐藤明子さん。市内で提供される学校給食の献立を考えるほか、各学校で子どもたちに直接食育指導も行う

美唄市学校給食センター

美唄市学校給食センター。ここから毎日午前10時半になると各学校へ向けて給食の配送が始まる

同じ日の午前中に美唄市学校給食センターを訪ねた。市内の小中学校、保育園など16カ所の給食をつくる調理室では13人の調理員が月曜から金曜まで、毎日約2200食分の給食をまかなっている。

「美唄の学校給食はすべて手づくりするところがすごいんです。まさに家庭料理と同じ」と声をそろえるのは、センターに勤務する栄養教諭、池田明美さんと佐藤明子さん。2人は以前、別の市町村で栄養士として勤務していたが、美唄に赴任してまず驚いたのが手づくりへの徹底したこだわりだった。一度に大量の食事をつくる学校給食の場合、加工食品を利用しながら献立が組まれるのは必然的なこと。

ところが美唄では、「既製品を一切使わず、コロッケもミートボールも、ドレッシングに至るまで、すべて手づくり。調理員さんたちの労力は大変なものだと思いますが、子どもたちにちゃんとしたものを食べさせたいという思いでみんながんばっています」と池田さん。

ご飯やパン、麺などの主食は1年を通して美唄産だが、野菜が美唄産に切り替わるのは収穫量が安定する2学期から。おもな野菜は市内で低農薬栽培を実践する農産グループ「みらいグリーンズ」から仕入れる。「おかげで安全な旬の野菜が手に入りますから、私たちも季節の味を活かした献立を届けることができます」と佐藤さんは語る。

食のまちで育った誇りを胸に

美唄中央小学校1年生 美唄中央小学校1年生 美唄中央小学校 酒井教頭

「信頼できる地元産の食材を子どもたちに食べさせられるのは、地域の協力があってこそなんです」と話す美唄中央小学校の酒井教頭

美唄産小麦「春よ恋」を使って給食用のパンを焼くのは開業50年以上の老舗パン屋の伊原商店だ。三代目の伊原潤司さんは子どもたちが喜んで食べる姿を思い描きながらパンを焼く。学校給食でパンが主食になるのは月6回。伊原商店ではコッペパンやソフトフランス、クロワッサンといった定番のほかに「子どもたちを喜ばせたい」という思いから、メロンパンやチョコデニッシュなど変わりパンも企画する。また、道内の学校給食では珍しく、地元の米粉を使った米粉パンを定期的に献立に加えている。「予算などの関係で難しいこともあるけれど、麺にしても野菜にしても給食に関わる美唄の業者は全員、“子どもたちに地元のいいものを食べさせたい”という思いでやっています」。

「さらに、栄養教諭の佐藤さんからは食材以外のこだわりも教えてもらった。「食器はプラスチック製ではなく強化磁器を使っています。当然、落とせば割れてしまうし、費用もかかります。それでも、給食を通して子どもたちがちゃんとした食器の扱い方を身につけることに大きな価値があると思います」。

質の高い給食を維持するのに手間と費用がかかることは否めない。給食費の未払いなど全国的な問題を抱えながらも、09年の春、美唄市では給食費をそれまでの1食244円から260円への値上げに踏み切った。苦渋の決断だった。

前述の美唄中央小学校では保護者への説明会を開き、理解を求めた。酒井教頭は「“子どもたちに安全で安心なものを食べさせられるなら”と保護者の方々にご理解いただけたことに安どしました」と語る。“美唄の食で元気に大きくなってね”、地域一丸となって支える美唄の学校給食は大人たちの願いが隠し味だ。元気な笑顔でほおばっていた子どもたちにもいつか、給食の思い出が故郷への感謝と誇りになる日が来るだろう。