クリスマスに捧げる一冊は「星の王子さま」
今回で5回目を数える「アルテの森語り」は、NPO法人アルテピアッツァびばい代表・磯田憲一氏の「地元の方々に楽しんでもらえる何かを」という思いから始まった朗読会。
毎回多彩なゲストを迎えて送る生演奏の音色に包まれながら、観客は語り手の声に耳を傾ける。
この日最初の語り手は、元HBC北海道放送アナウンサーの安藤千鶴子さん。サン・テグジュペリの『星の王子さま』を朗読した。「皆さんも主人公の星の王子さまのように、子どもの心に戻った気持ちでお楽しみくださいね」と一言述べてから、安藤さんは静かにページをめくり始めた。
イーゼルに立てかけてあるのは『星の王子さま』の挿絵ポスター。「視覚的なガイドになれば」と安藤さんが用意した
著者サン・テグジュペリの分身である作中の語り手「ぼく」と星の王子さまの会話を通して繰り返されるメッセージは、「肝心なことは目には見えない」。目を閉じてじっと聞き入る観客の心にはどう響いたのだろうか。
美しい発音と深い作品理解で登場人物を豊かに読み分ける安藤さんが最後の一文を読み終えると、あたたかい拍手が送られた。出演後の安藤さんに感想をうかがった。
「皆さんがとても熱心に聞いてくださったおかげで、聞く力のすばらしさを実感いたしました」。『星の王子さま』を選んだ理由は「作中に出てくる井戸の水はキリスト教の“聖水”の暗喩だという説もあり、『星の王子さま』はクリスマスとの関連が深いお話。12月23日の朗読会にふさわしいのではと思い、気持ち良く読ませていただきました」。
「森語りのスタッフの方々があたたかく迎えてくださったことにも心から感謝申し上げます」と語る安藤さん
プロになるまでの東京時代、
定年退職した父への思いを熱唱
第二部は「森語りの会」主宰の磯田氏と、氏の朗読にピアノ演奏で寄り添う北海道出身のミュージシャンJUNCOさんの二人が登場。「JUNCOさんは人生を歌える力がある人」と見込んだ磯田氏が声をかけ、今回の出演が実現した。
磯田氏が朗読したエッセイには、北海道から上京しプロになるまでの道を模索したJUNCOさん本人の気持ちが綴られていた。続けて、彼女のオリジナルソング『春に帰る』『重ね日』『コスモス』、そしてアンコールで『テネシーワルツ』が熱唱された。
写真左から磯田氏、パワフルな歌声のJUNCOさん
中でも『重ね日』は定年退職を迎えたJUNCOさんの父親を思って歌ったもの。歌の前に挿入された磯田氏による父親の一人称で構成された朗読は、「二日前に実際に父に書いてもらった」手紙を基に急きょ、原稿が作成されたという制作秘話も披露された。同世代とおぼしき男性がひときわ大きな拍手を送っていた姿が印象的だった。
「つねにリアルな感情、生きている言葉を歌いたい」と言うJUNCOさん。「アルテの静かな空間で歌っていると、私から発した歌が聞いてくださる皆さんの中を通ってまた自分に返ってくる、エネルギーの循環みたいなものを感じました。今日は本当にここで歌えて良かったです!」と笑顔で語ってくれた。
冬至かぼちゃや美唄名物とりめしで
お腹の中もほっこり
終演後はお待ちかねの食事タイム。アルテ側が用意した冬至かぼちゃや手打ちそばに、美唄焼き鳥や名物のとりめしなど参加者の持ち寄りによる一品料理が加わり、おいしそうな匂いが部屋中に広がった。箸を動かしながら朗読会の話も弾み、やがて今宵はそろそろお開きの時間に。
冬至かぼちゃのおしるこやとりめしに笑顔がこぼれる。打ち立てのそばも「これは絶品!」と大好評だった
最後に磯田氏に話を聞いた。「アルテのキーワードは“おかえりなさい”です。この空間を愛する人は誰もが“アルテ市民”。いつでもここに戻ってきてもらいたい。その一つのきっかけである『森語り』も、今日のように地域の皆さんのお力を借りながらこれからも継続していきたいですね」。
「森語り」の名付け親でもある磯田氏


